片頭痛 説明
みなさん、この気圧の変動が多い時期、頭痛で悩まれていませんか?
頭痛は生活や仕事の質を下げることも多く、なかなか困った症状です。
しかし、「頭痛くらいで・・・」と医療機関を受診しない(できない)人も多いのが実情です。
実際、忙しい仕事の合間を縫って、せっかく医療機関を受診しても、CTやMRIの検査で「異常がない」で診療が終わってしまう事もあるでしょう。
特段の治療もなく、結局引き続き、頭痛で悩まされながら生活を続けると、何のために受診したのやら…と思うこともあると思います。
医療機関の役割の一つとして「危険な病気か、そうでない病気かを見極める」という面がありますので、「危険なものでない」となると、急に対応があっさりした感じになってしまうことはままあります。
特に総合病院の専門外来などは忙しいですので、ゆっくり時間を割くことはできなかったりします。
CTやMRIなどの検査で、脳の中に病気のない”たんなる”頭痛のことを一次性頭痛といいます。
片頭痛や緊張型頭痛(よくいう”肩こり頭痛”ですね)が有名です。
一次性頭痛の診療ゴールは、単に「怖いものか」「そうでないものか」を見極めるのにはとどまりません。
頭痛の「頻度」「強度」「持続時間」を下げ、「生活の質を改善すること」「薬物誤用による頭痛の増悪を回避すること」、これが目指すべきゴールです。
本来、慢性頭痛(長く悩まされている頭痛)は、きちんと医療機関で診察・検査を受け、正確な診断をつける必要があります。
今日は、すでに怖い疾患は無かったものと仮定して、一次性頭痛の中でも「片頭痛」に焦点をあてて、日常生活で注意すべきポイントなどをお話したいと思います。
ちょっと寄り道
片頭痛の治療には、やはりきちんとした薬物療法が必要です。
しかし、定期的に医療機関通院することが困難な忙しいお仕事の方も多くおられます。
特に片頭痛の特性上、交代勤務の方に多いですので、貴重な休みを削って医療機関を受診するなんて、なかなかハードルが高く感じられます。
そこで、少しでも皆様の頭痛頻度と程度を減らすべく、自宅でできる工夫などについて触れていみたいと思います。
目次
1.まず痛みをとるために。市販薬との付き合い方
何かを気をつけよう、頑張ろうと思っても、そもそも頭痛があると何もする気になれません。
頭痛を経験したことがない、あるいは軽度の頭痛しか経験したことがない方は、「なんだ、頭痛くらい。気合を入れろ。」とありがたいアドバイスを下さいます。
でも、無理なんです。
キツイんです。
そこで、やむを得ず痛み止めを使用します。ただ、この「痛み止め」、自分に合っていないものを使っても、あまり改善しません。副作用で眠くなったり胃が悪くなったりしながらも、痛みを取りたくて、ついつい量や飲む回数が増えていったりします。
繰り返しになりますが、きちんと診断を受けて、適切な治療薬を使用するのが第一です。
しかし、医療機関受診のできない場合、市販薬も上手に利用できると生活の質が改善します。
頭痛薬として市販薬に含まれている成分には、主剤として次の3つがよく知られています。
・アセチルサリチル酸(アスピリン):バファリン、アスピリン、ケロリンなど
・イブプロフェン:EVEなど
・アセトアミノフェン:セデス、ノーシン、ハッキリ、トンプクエースなど
これら主剤に、イソプロピルアンチピリンやエテンザミドが併せて入っていたり、鎮静催眠作用のあるブロムワレリル尿素やアリルエソプロピルアセチル尿素が加えられていたりします。
痛み止めは、強い弱いよりも、主剤との「相性が合うか合わないか」が重要です。僕の場合、アセトアミノフェンは全く効かず、イブプロフェンはよく効きます。反対の方もよくおられます。
自分に合っていない薬を漫然と飲んだり、内服する量や頻度が増えていくと、より厄介な病態(薬剤乱用頭痛)となっていきますので注意が必要です。
2.生活習慣の改善(食事)
食事は重要です。
ただ、何かの栄養が足りていないから即、片頭痛になるというものではありません。逆に、何かを摂取すれば片頭痛が起こらずに済むものでもありません。
一つの要素として、きちんと理解ながら十分に気をつけるべきものと思ってください。
特に、マグネシウムやビタミンB2は意識して摂取するようにしてください。
大豆や海藻類にはマグネシウムがよく含まれています。
ビタミンB2は、牛や鶏のレバー、うなぎ、牛乳などに多く含まれています。
可能な範囲で、こういった食材を積極的に摂るようにしましょう。
一方で、片頭痛を悪くする食べ物として、
ウインナー、チーズ、チョコ、赤ワイン が有名です。
絶対ダメではありませんが、控え目にされた方が良いでしょう。
あと、片頭痛の程度を左右する重要な物質として、セロトニンが考えられます。
いろいろ分かっていないことも多く、半ば推論ばかりのお話になってしまうので、深くは触れません。
結論だけ言うと、セロトニン系を強化するには、朝食はなるべくパンよりもご飯と大豆由来の食品を摂って、午前中に日光を浴びるように習慣付けると良いでしょう。
3.生活習慣の改善(睡眠)
片頭痛患者さんの約30%は睡眠不足の時に頭痛が生じることを自覚されており、約25%の方は、逆に睡眠過多(寝すぎ)の時に頭痛を生じられています。きちんと、決まったパターンで寝ることが大切です。
交代勤務をされている方は、この点で非常に頭痛のコントロールが難しいです。国際便の客室乗務員なども非常に強い片頭痛で悩まれている方も多いです。
4.生活習慣の改善(ストレス)
ストレス が続くと片頭痛の頻度が上がります。これは、なんとなく想像がつきそうです。
しかし、問題なのは、ストレスからの解放です。急にほっとすると頭痛が生じます。僕自身は学生時代、運動会の後、試験週間の開けなどに良く頭痛が起こっていました。
程よい緊張感で、ある程度のタスクを自分に課して、テンポの良い日々を送るのが大切です。
5.生活習慣の改善(環境)
天候の変化、温度差、臭いなどは片頭痛の原因となり得ます。自分ではどうしようもないことですので、頭痛が起こってしまった時に、「なるほど、天気のせいか」とむやみに怖がらないための情報として知っておいてください。
6.薬物乱用頭痛
実際にはいろいろと細かい定義はあるのですが、ざっくり言って、月に10日以上痛み止めを使う日があって、それが3ヶ月以上続いているときは、薬剤乱用頭痛と考えてください。痛み止めを飲むせいで更に頭痛が生じている状態です。この状態から抜け出すには、きちんと医療機関に通う必要があります。
片頭痛は、日々の生活の質や仕事の質を、知らず識らずのうちに低下させる困った疾患です。
適切な治療を受けることが第一ですが、生活の見直しで少しでも楽しい日々が過ごせることをお祈りしております。
黒川病院 院長
黒川 徹